指先の向こうには/AB(なかほど)
 
がボトボト
と帽子にも頭にも地面にも落ちてくる

ミヤマやヒラタよりも
ハナムグリが多く混ざっていると
僕にとっては一石二鳥なのに
兄ちゃん達は 
   ちぇっ
と放り出す
地面に落ちる前に
飛べ

  ギンガーミー



しばらくは涼しい森の
風の匂いのたっている気もしていたが
裏庭に面した道路の工事の音に
簡単にかき消され


トランプをしていた相棒にコーヒーを渡すと
 何を指さしていたのか
と聞いてきた

そうか
知らずにさしていたのか

いや、今 
裏の通りをトム・クルーズがF4で飛んでった

冷たい鼻笑いで愛想つかされたが
しかしながら
僕のハナムグリを肴にされるよりは
まだましだろう


たいしたことではない
ほんの暮らしの盲点や句読点で
儚いというほどのこともないけれど
事実は
光るハナムグリが指先の向こうへ
飛んでった だけ








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