指先の向こうには/AB(なかほど)
たところには
注射失敗の痣が今でも残っているが
(とくに大腿静脈は最後の手段なのか、とてもひどく)
そのひとつひとつをさすってくれた手があった
はず
ときどき
しらずしらずに
指先は痣をさすりながら
僕の中の何かを治してしまったのは
もう指を伸ばすこともできなかった
あのあばあ達の手だったのかもしれない
けれど
嘉手納の町医者もハジチもなく
語って確かめる相手ももういない
七
少し遅れて桜が散る場所を覚えていた
ほだ木の並ぶ道を歩いて
ふとふりかえると
立山の形がぼんやり海に浮かび
もしかして僕はあそこに行きたかったのかな
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