決別のひと/恋月 ぴの
花はどこへ行った
なんて問い続けるよりも大切なものが私たちにはあった
それが今の生活であることは否定できないし
ひとの望むものなんて目に見えるものに他ならないのだから
ありふれた結婚生活に憧れてた
誰しも安逸な幸福感に満たされていたい
例え明日が約束されていないとしても
それだから私たちは
花はどこへ行ったなんて問うこともなく
朝9時始業だとしてもそれ以前には職場へ就いている
それを嘲笑う権利は誰にでもあるし
今すぐにでも投げ出すことはできるけど
満ち足りていたい
そんな心の渇きはどうしようもなくて
あれこれと文句言いつつ
今朝も遅刻しないかと
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