ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 
の孤独な朝のポエムをそぞろ囁いている、ぶらぶらと生き所帯をもてず、夢や希望も捨てるしかなかった人生に、最高のスマイルを投げよこしてくる。奇妙にふるえる手と声帯と、干草のかさなりと、はずされた足枷の圧迫されていない開放感。
 凛は、思う。
(宇宙にとってあの女はなにか、この世界に宇宙とあの女の二者しか存在していないとしたらあんな女、汚物だ。バケモノにすぎない。虚空の宇宙空間にぽつんと漂う彼女は一人では自足することができず、意味もなくはえている四肢をもがかせ二つの眼球をもつが何も見えない。彼女の足が意味をもつのは大地の上だけだ。彼女の容姿が意味をもつのは同じ姿をした異性の性欲によってだけだ。それら
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