ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 
から言うわけないでしょ。ちょっとあなたをからかって見ただけよ」艶かしく鳥男の脇腹をさすりながら、「ねえ、キスしましょ、血生臭いあなたのその口とキスしたいのよ」
「へへ、へへへ、そうこなくっちゃ」唇と唇が重なろうとし、鳥男の細い目もさらに細くなる。そんなロマンチックな折に、信じられない事が起こったのだった。油断していた鳥男のまたぐらを多義子は思い切り、先の尖った革靴で蹴り上げ、小物入れから取り出した催涙スプレーを鳥男の目、1?の距離ほどから噴射したのだった! なぜ?
「な、なにをする!」目を手で押さえながら鳥男がじたばたしているすきに、多義子は、か細い声で、「た、たすけて……」なんて言っちゃって
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