ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
ってる、虫の息の渋谷を女だてらに抱え上げ、「さあ、逃げましょう、私、ほんとはもとの世界への帰り道、知ってるの、あなたは違う世界に行くことになるけど、ごめんね。もう家には帰れないけど……」
それから……
4、5分、涙で目を腫らしながら、苦しんでいた鳥男はすっくと立ち上がり、渋谷と多義子のいなくなった寂しい丘の上で、「おのれ……、糞ども……、俺は目は弱いが、だが、この俺様の嗅覚をあなどるなよ、絶対に探し出し、お前らを叩き殺してやる」と、一人ごちていたのだった。
26 ぬけがらのような日々
ケイビインが2名いた。彼らは生きることに疑問をいだいていて、なぜ生まれてきたんだろう
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