ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
の?」
ギロっと多義子を睨みつけ、鳥男は、「もう人じゃないさ、鳥さ。いや鳥でもないか。だが人でないことは確かだろ?」
「こんなことはもうやめましょうよ。あなたは何のためにこんなことをしてるのよ、昔のあなたもそんな人だったの? 違ったはずよ! あなたは何か大切なものを忘れてしまったんじゃないの?」
「それいじょう口やかましいことを言うんじゃねえ! 言ったはずだ。俺はもう人じゃない。渡辺じゃない。俺は血に飢えた、血に飢えたそれだけの生き物だ、もう染み付いた自分の性質は変えられっこねえんだよ!」
多義子はさも可笑しそうにケロケロ笑いつつ、「冗談よ、私がそんな青っ白い女教師みたいなこと本心から
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)