ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 
。一瞬にして血に染まる渋谷の服。大量の血が噴水のように噴出し、苦痛の叫び声をあげ、渋谷は痛みと驚きにもんどりかえった。そしてそのままワンモーションで何とか、必死に逃げようとして、砂を手で掴み、這う。そのゆっくりとした渋谷の這いを、勝ち誇った眼差しで、満足そうに見下ろしながら、鳥男はナイフのように鋭い爪で、渋谷の頭を押さえつけた。後頭部から血が滴る。鳥男は屈みこみ、先の細い舌先でその血を舐めあげ、「うまい、うまい血だぞ。ははは、さすがに若い男の血はうまいもんだ!」と、喜びの声を発する。
 その時、状況を見守っていた多義子が言葉をはっした。
「渡辺さん、あなたはいつからそんな人になってしまったの?
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