ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
からなってきたようだな、ふふ。昔はドMだったもんだがなあ)そんなことを鳥男は思っていた。そして、遠い目をして、しばらくの間、無言で羽ばたき続けた。
丘に降り立つと、グロテスクきわまる鳥の足をふり、渋谷を放り投げ、吐き捨てるように、「ここには誰もいないぞ、へへへえ」嫌みったらしく鳥男は笑いながら、獲物を狙うギロギロと血走った目で渋谷のつま先から頭のてっぺんまで何度も繰り返し、見やる。「誰もお前を助けちゃくれないってことだ、僕」
「早いことやっちまいなよ……」多義子は毎度のことに少しあきれ返りながら腕組みして、言った。
「そうだな」
次の瞬間、渋谷のみぞおちに鳥男の鋭い嘴が突き刺さった。一
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