ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 
しは爽やかに目覚めて、快適だと感じ、寝床を出て一杯のコーヒーで喉を潤した日もあったのにさ。何者かわからぬ者の人影を眺めている渡辺の傍らにある電信柱には、『鳥獣保護区域』と、貼り付けられてあり、『止まれ』の文字に止まり続けていた人々の姿は消えていた。デブは玄関まで近づいた。確かに、『渡辺』と彫られた表札がある。インターホンを押してみた。中でガタガタ物音がして、母親が出てきた。
「ただいま……」
「は? どなたですか? うちは渡辺ですけど」母はそう言い、きょとんとした目で息子を見続けていた。
 どうしていいかわからず立ち尽くしていると、猟銃を持った父が険しいまなざしをしてやってきて、「お前が鳥じ
[次のページ]
戻る   Point(0)