ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 
になってしまった、そんな、彼の目の前に、今さっき出かけていった自分の家が変わらずあった。部屋の窓が半分ほど開かれ、カーテンが風に舞っている。懐かしい、George・HarrisonのMy Sweet Lordが聴こえてくる。室内にはプチ鬱な日々を過ごすもう一人の自分がいて、
「ふう……」
 と、ため息をつき、カーテンに降り注ぐ目映い太陽光線を浴びながら、掛け布団をめくり上げ、重い気分のまま、のそのそと起き上がっているのだろうか。わからない。だけど、腺病質そうな人影が見えている。細長い、管のような奴の影が薄い花柄のカーテンに、風に揺れながら。あいつにとって朝の輝きも、暑苦しいだけだろう。むかしは
[次のページ]
戻る   Point(0)