ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 
じて。そこへと。……渡辺は境界に行ってみることにした。いまの境遇よりもましかもしれなかったから。思い切って、飛び込んでみるべきだと。渡辺は境界に生きる望みを見出そうとしていた。
 街路樹の木の葉が街灯の明かりに照らされている。緑色に。『止まれ』の文字に従い続ける人々は道路に次々と倒れていったのだろう、重なりあって死んだように動かない。そんな倒れた者を見下ろしながら新たな人々が彼らの真横に立ち尽くし、何やら小声で話しこんでいた。渡辺は彼らをなるべく見ないようにしていた。彼らを見ていると自分も将来あんなふうに意味もなくただ立ち尽くす人間になってしまうような気がして。──吹き付けてくる風が冷たかった。
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