ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 
ぶしく照りつけてくる太陽の日差しを浴びて、爽やかに目覚めた。床に置いていたペットボトルを取り、一口、ジュースを飲むと、洗面所に行き洗顔し、犬を呼びつけた。首輪にリードを付けると、5、60人ほどに膨れている人々の向きとは、反対方向に道を歩いていった。家を出るときに見たが、先頭のほうの人々はもう立っていなかった。ぐったりとして、地面に寝転び、止まり続けていた。後ろのほうに並んでいる人々から浴びせられる視線が痛かった。彼らは冷ややかな眼差しで渡辺をにらみつけてきた。舌打ちも打たれた。
 50メートルほど歩くと、犬が歩き止りドブ川沿いの草に小便をかけた。その小さなドブ川の中に薄緑色の作業服を着た男が一
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