ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 
た。そのためにますます現実逃避。
 デブは本を放り投げ、窓を開けた。冷たい風が部屋に入り込んできた。暗い闇夜に星が光っていた。彼らはまだいた。その数も増えていた。街燈に照らされる彼らの青白い顔が不気味だった。もはや顔から精気が消えている。支えたり、支えられたりしながら何とか頑張って立ち続けようとしているようだった。彼らの人影はごそごそといつまでも動き続けていた。デブは睡眠薬をウィスキーで流し込んで、ベッドに身体を投げ出した。また、デブの本名は渡辺高夫といった。これからはデブを本名の渡辺と呼ぶことにしよう。ただ、それはあと数回のことになりそうだが……
 翌朝、デブこと渡辺はカーテン越しに、まぶし
[次のページ]
戻る   Point(0)