ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 


   22  不思議な標識。矢印はやや斜めに

 ゆったりとカーテンがたるんで机の端にかかっていた。デブはカーテンを手で払い、窓を開け外を見た。アスファルトの道に白い文字で大きく『止まれ』と書かれてあった。いったい誰が書いたのだろうか。デブは何か得体の知れない大きな存在者を漠然と予感していた。『止まれ』の文字の前には一本の線が引かれてあって、その線の前で止まっていなければならないらしかった。見ると、昼頃には四、五人だった並んでいる人の数もかなり増していて、ざっと見て、15人ほどの老若男女が列を作っていた。先頭に80歳くらいの老婆がいて、背後を振り返り、くたびれた服装をしているおじさんに
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