ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
めました。そして金をくれというように手を差し出しているのです。農夫は窓を開け、自分でもわけがわからないまま、『ダディ』を差し出すと、彼は仔細にそれを見て、嬉しそうにトンネルの中に入っていきます。
農夫は興奮して我を忘れてしまっていた。大切な『ダディ』を奪われたことと(また買えばいいという単純なことがなぜかこのとき農夫の頭に浮かびませんでした。浮かばないはずはないのですが、やはり幽霊を撮影しようとするとカメラが故障してしまうような、そんな類の怪奇現象かもしれません)、贈り物を嬉しそうに受け取った彼への感謝の念があふれ出たことと、しかしどうしてもそれは返してほしい、お金ならいくらでもやるから返して
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