ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 
られるような感じがすると農夫は夢の中に引きずり込まれているのです。農夫はそのとき夢だとわかっています。だからこそ怖いんです。現実なら獣人などはいません。河童もいません。でも夢の世界ではなんでもありなのです。そしてその夢は覚めるという保証がないのです。
 農夫はトンネルの入り口のすぐそばに三時間ほどいました。思いあぐねた末に農夫がとった行動は、笑いたいなら笑え! 本を読むことでした。
 郷ひろみの『ダディ』を読んでいました。時のたつのも忘れて熱心に読んでいましたが、ダディに対する周囲の無理解、冷たい仕打ちなどのくだりを読むにつれ農夫は腹立たしい思いになっていきました。この本を読んだ方なら同感だと
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