ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
に多義子は長文をタイプしつづけた。キーボードを叩きつけるようにして。そして送信してしまうと、ベッドに倒れふした。しばらくうっ伏していたが、顔を少し上げると、枕元のうさぎのぬいぐるみをしばらく放心して眺めていた。行き着く先は闇だというのに……、でも、泣いていられない。ネチネチ、してる場合じゃないんだ。
20 木彫り、浮き彫り、生殖器
大木が聳えている。この人々が寝静まりつつある農家のすぐ脇に。農夫は、デブと牧師の妖艶な交接には目もくれず、数々の思い出がある楡の木陰へと赴いた。枝がスリムだ。バレーダンサーの細長い腕のようにしなやかにくねりながら伸びきっている。それは暗くて見えない
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