ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
か開かないように工夫しながら、しかし、その最小限度に開いたドアの隙間から配達人の怒りに満ちた拳骨が繰り出されるような気がしてならなく、まるで目に浮かんでくるようだった。農夫の耳に罵声が響き続ける、てめえ! チェーンを捩じらせやがって、そんなんしても無駄なんだよ、俺は空手三段なんだよ、こんなチェーン俺の空手チョップ一発でぶちぎったるわ! てめえ、許さん! ぶっ殺したる! ぶっ殺したる! ぶっ殺したる!
運転手はまた腕時計を見る。少し飛ばそう、か。余裕をもって、時間に必ず間に合うようにしなきゃね、時空を超えるのさ! 仕事が終わったらあの麗しい洋子の待つ家へ! さあ、頑張るぞ! 洋子も最近、家事を頑
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