ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
に、なんでもないことだと信じきってたのに…… 実際、もう時間は迫りつつある。刻一刻と。そいつがきやがったら、あの丸いのあるだろ。ドアの中央のだいたい背の高さよりちょっと低いぐらいの位置に、玄関先のやつが誰かを覗く小さな望遠鏡みたいなのが、あそこまで、俺は物音をたてずに静かに爪先立ちで歩いていって、覗き込むだろう。だがそんな行為も意味をなさない。俺一人だけ気配を消しても周りの奴らがうるさすぎるから。1万本のえんぴつが入ったダンボールを重そうに抱えている配達人がドア越しにいて、それで俺はどうすればいいんだろうか。なにかもうどうしたらいいかわらない。金は用意してある。だが、その一万本の鉛筆をどうする。恵
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