ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 
、「たしかに夜9時以降だよな……」と呟き、宅配会社に電話をかける。「なんかいるみたいなんですけど、出てこないんですよ」とかなんとか、それで俺の家に電話をかけてくるだろう。だが俺が出ることはない。出たくないのだ。確かにえんぴつ一万本注文はした。暇つぶしのために、電話で注文した。こっちから働きかけて、それで、何かが実現する。その仮定が面白かった、なにかを手に握っているような、手中にしているような、手のひらの中に現実をはべらせ、その現実をギュッと握り締めているような。現実? いや、真実だ。そうやって暇をつぶそうとしてて、余裕でできると確信できてて、さあやるか、ちょっくら、って思って軽くやった行為なのに、
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