ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 
ぜ! かき鳴らすことにはなりはしない重い重いハープを! ……それは俺の罪なのか?」
 天使が、
「そりゃあいつが悪い」
 黒猫が、
「あの娘は演奏したいんだよ。毎日、今日こそはと張り切ってここにきてはその幼い願いを裏切られ小さな胸を悲しみの藍色で染めつ、とぼとぼと帰ってんだよね」
「そうともさ。みんな演奏する気まんまんでやってきてるんだ。楽団員は夜の7時から9時までの2時間のショウ・タイムのために遅れずにやってこなきゃならないし、生活を賭けて練習してやってきているんだ。演奏もせずに金だけもらえないといって受けとらない人も多いんだよ」
「こいつらは」蘭野は観客を見おろし、「こうしてここに
[次のページ]
戻る   Point(0)