ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 
手がまきおこった。そうだ。やつらの中にはこの俺のパフォーマンスを喜びはしないにしても完全に拒絶はしていないグループもいるのだ。もしそれが聴くに耐えるみごとなものであったならばおざなりにも拍手することをいとわないグループもいるのだ。……昔のようにオーケストラの演奏をバックに、踊ってもやつらは驚かないのかも知れない。いや、それを待ち望んでいるのか?」
 蘭野はちらりと観衆のほうへ視線をやる。
「いや、やつらはもう昔のやつらじゃないんだ。やつらは常に同じやつらで構成されているわけじゃない。分刻みで入れ替わっているのだ。変わらないのは俺一人だ。いや、俺も変わったが。もし、昔の俺を望んでここに足を運んで
[次のページ]
戻る   Point(0)