ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
だ。俺をじっと見つめている。何か言いたそうに。俺の生活を暮らしぶりを知っている目だ。おそらくは。……やつらはこの場所を休憩所かなにかのようにして利用しているのだろうか、なら、何のパフォーマンスもしない俺はやつらにとってはうってつけの演者なのだろうか。いや、そもそも俺がいようがいまいが関係ないのだろうか。……俺がここにいなくてもやつらは絶え間なくこの小ホールを埋めつづけるのだろうか。俺の存在の有無などささいなことで、俺がいてもいなくても……」
コンビニで買ってきた弁当をレンジで温めて待つ間に、蘭野は迷っていた。自分のことを。自分の将来のことを。音響のよい小ホールのしんとした空間に弁当が温められた
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