ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 
鳥よ! ふりきられるなよ! 今の俺は自分でもどうしようもない躍動感に満ち溢れているんだ。俺の羽ばたきを見よ。一羽ばたき、一羽ばたきを見てくれ! 翼のだよ。滑らかであって、いかに力強く勇ましいことか! こんな自惚れた自画自賛して、自分に酔ってたってしかたねえな。誰も聞いてないのによ。ワッハッハッハッハ。風が聴いてくれてるのさ。俺は情けなくはいたくない。勇敢でいたい。今さっきまでの自分を捨てさって。冷たく鋭い風が吹きすさぶ。ズキズキと、昔の恥ずかしい思い出のごとき痛みが走る。ハートアピアリングなごとき、ハートエイキング、エッチングなごとき。目をつぶらざるをえないそんな中でも薄目をあけて俺はゆく。実は電
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