ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
は電線にとまりたいんだけど。俺の巨体でもとまれる電線があるんだ。稚内に。積木のような赤や水色の屋根の家々。丘のある広漠とした大公園の緑色の展望台。昔は白色だったのにこんな色に塗りかえやがって。情緒も何もなくなってしまった。萌えなんとか色にしやがったんで。うそつけ。だけど、そんな感じ。イメージで。酸っぱいような海が拡がっている。ヨットは見えない。遠いから、遠すぎてわからない。だけどあるかも。夕日が沈んでゆく、青空を橙色に染めあげてって。夜になれば星ぼしが輝き始めるだろう。そうなったら俺は一番輝いている星を目指して羽ばたいてゆく、さ。力尽きて羽ばたけなくなって絵本のような家々の屋根に叩きつけられ、疲れ
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