私の好きにさせてくれ 2/テシノ
 
等の失敗作の話を。
失敗作とは言っても、それはイグナーツの確信的な犯行でした。
その業界ではちょっとした有名人になった二人、ある日なんとオーストリア帝国の皇帝に献上する時計を作らないか、という話が舞い込んできた。
これは大変な事ですよ、大変名誉な事ですよ!と喜んだのはベーヘメン。
イグナーツは渋い顔をした。いや見てたわけじゃないけどさ。
というのも、イグナーツはオーストリアの出身で、わりと気位の高い男だった。
当時のオーストリアはハプスブルク家が統治してたんだけど、時の皇帝はオーストリア帝国始まって以来初のハプスブルク家出身じゃないルドルフ一世。
イグナーツはこれがすっごく気に入らな
[次のページ]
戻る   Point(2)