湿り気/たもつ
 

西病棟の長い廊下に湿ったモップをかけるから
清掃婦の後姿は僕の幼い娘に似ているから
寧ろそれは僕の幼い娘ではなく君に似ているから
決して君ではなかった
何度目になるというのか また「正」の字が増える


ボカァ ハラァ へったァ へったァヨォ
持っているフォークにはひとつひとつ
歯がありませんから
コツコツと叩く西病棟202号室の白い皿の上では
晴れ間が続いている 本日のお天気
このままでは湿ったグラウンドの水分もきれいに蒸発するでしょうと予報士
けれども果てしなくリレー選手は朝飯を食べ続けるから
濁りのない右手をつきあげるゴールテープは濁っている
僕の書く「正」
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