湿り気/たもつ
 
正」の字のようにどこまでも
です


その片隅には君が植えたミニトマトの畑
僕も娘も沢山のミニトマトを食べて良い
でも僕の幼い娘はミニトマトが嫌いよって嫌いだから
赤く赤くはじけてしまうから
食べる度に増えていく「正」の字はいつも湿っている


内診する若い医師の白い白い手が
僕の卵管に到達して腫れあがった卵巣をまさぐり
笑い 泣き 叫ぶごとに増えていく「正」の字
生ごみは燃えるごみとしてくださいと張り紙
捨てられないものはどうぞこちらへ
ふと朝は音を失う
ボカァ ハラァ へったァ へったァヨォ
幾分かの湿り気とともに配膳車が長い廊下の中央に止まる



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