音のない洞窟/吉岡ペペロ
の胸も痛かった
じんじんとした違和感がはりついたままだった
シンゴは窓に見える月に明日この窓を磨いてやろうと小さく誓った
そしてさっきまでファドのCDを聴きながら聞いていたヨシミの結婚ばなしをたどるのだった
男の歌うファドだった
シンゴはさいしょからリピートで設定していた
曲が終わっては始まるのを聴きながらシンゴはヨシミの覚悟や逡巡を聞いていた
目の前のテーブルのうえの夾雑物が薄皮がはがれるように少しずつ姿をかえていった
月を見つめてそれを思い出していた
シンゴの好きなかたちで寝ていいよ、
手はいいのか、
だめ、
ヨシミがシンゴの手をあらためて胸にお
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