音のない洞窟/吉岡ペペロ
た話がシンゴにタバコを三本吸わせた
会社名の入っていないクルマが数珠繋ぎになって歩道沿いにアイドリングしている
どれもが木陰の陽射しに高級そうに光っている
運転席のシートはみな後ろに倒されていてクルマには誰もいないような感じもした
みんな音のない洞窟にいるんかなあ、
シンゴは鼻の脇の汗を指でぬぐいながらそうひとりごちてじぶんは今セミの声のなかにいると思った
ランチにでるまえシャワーを浴びながらオナニーを試みたけれど揉めば揉むほど硬度がなくなっていったのを思い出した
そしてきのうの夜を思い出していた
ヨシミの胸に手を置いて眠った
胸が痛いのだという
シンゴの胸
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