『渦の女』/川村 透
あわてて、
それを手に取るとくねくねと糸は生き物のように動き僕の小指の根元にからむ
きゅうと締め付ける糸に指は麻痺し根元が赤く赤くルビーのように腫れ
ぷつりころりと小指が切れて落ちた
拾うとそれはストロベリーの香のするどきどきするようなゼリービンズ
いとおしくて、なでさすり、夢中になって磨くうちに
それは日傘の柄に育ってしまい白い白い傘の花がぽんっと開いたら、
いつの間にか僕のすぐそばに彼女がいて
僕の廻りをぐるぐると巡りながら
僕を白い糸で繭に閉じ込めようと笑っているではないか
ほのかに彼女の残り香をはらんで糸は際限なく生まれて来る
彼女はレースの手袋をしていた
その白い
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