注視/はるな
 
多くの人間が思い違いをしている。努力すればわかりあうことができると信じている。そのことがすこし世界を悪くしている。わかりあう必要などどこにもないのだ。必要なのは、わからないものを許したり愛したりする才能だ。そのことに、多くの人間が気付いていないように思う。人々は物事を理解しようとしすぎる。そして理解できないと落胆し、絶望し、もっと悪い時には相手を罵倒する。かなしみが増幅する。ブラックホールのように深く茂っていく。そんな黒い物体が、少し人通りの多い通りを歩けば、そこいらに見つかる。わたしはそれを無視できない。それには何か特別な引力がある。逆らいたいな、と思う。だけどできない。たくさんの知らない人々が
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