注視/はるな
々が往復する。おなじ道の上にいる、でも全然何も同じではない。わたしの思考は横転する。薄っぺらいコーヒーを持った女が走ってきて、わたしにぶつかる。ひどく熱いコーヒーが膝にこぼれる。女には才能がある。わたしにはないのかもしれない。わたしはいま奇妙な顔をしているかもしれない。大事なのは許すことだ。受け入れることではなく、より多くを許すことだ。でもそれだって、自分が許されたいがための行為に他ならない。行き場のない人々が往復している。物事はそもそものはじめから矛盾している。どこか遠い場所から清潔なにおいがする。わたしはそのにおいのする場所に近づきたいと思う。だけどそれができない。罵倒されている。思い違いをしている。人々ではない、知らない人々ではなくて、いつも自分の目を通して、自分の姿さえ見えないのだ。何も見えていない。盲目の真昼が降っている。
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