そうして夏は行ってしまった、翼竜の化石のように/ホロウ・シカエルボク
 
ダンを巻きつけ過ぎた男婦が誘いをかけてきた、俺はそいつのことを結構最高にイカしてると思った
彼女は見事に宿命を飛び越えているみたいに見えたのだ
手首についた無数の傷を目にするまではね
白けたって言うと彼女は野太い声で泣き始めた
「ホルモンのカプセルが欲しいの」そう言って
なあ、魔法みたいに、運命が好転することなんて人生においてあまりあることじゃないんだ
なのにお前らみたいな人種はファンタジーに浸かり過ぎているんだよ
冷笑気味にそういうと彼女は激しく嗚咽した
俺はなにティックとも呼べない感情を抱えながら彼女を見ていたが
約束の半分の金を置いて安ホテルを出た

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