その教師は間違っている/殿岡秀秋
 
く。

親の仕事

担任が休み時間にぼくを呼んだ。黒板の前に座る教師に机をはさんで立ったまま向き合った
「おかあさんは働いているの」
「うん」
「どんなお仕事」
ぼくは答えたくなかった。腰から下の脚を蟻の脚のようにこすりあわせた。それから膝で8の字を描いた。
「働いているんでしょう」
「ええ」
「何の仕事なの、言いなさい」
担任の言葉の勢いに、ぼくは言わなければならないと思った
「飲み屋」
「飲み屋だって立派な職業じゃない」
ぼくは教師に背中をむけて、机からはなれてトイレにはしった。担任のコトバが後をおっかけてくる。
「飲み屋だって立派な職業じゃないの」
その声は
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