ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
 
ってしまった。狼が吼えているかのように風がうなり、降り落ちる雨に濡れながら道なき道をさ迷った。石がごろごろ落ちている急斜面を登りきると、巨大な岩壁に縦にまっすぐ光の線が走っていて、見渡す限り辺り一帯に拡がっている霧が、その中にどんどん吸い込まれていっていた。
「あそこよ!」
 霧とともに岩壁と岩壁の隙間に飛び込むと、突如、頭上から太陽の光が浴びせかけられ、目がくらんでしまった。しばらく地面にしゃがみこんでいると、やがて、祠のようなものが見え出してきた。五、六段階段をおりて中へ入ると、洞窟のようになっていて先に進めた。階段の両側には槍が立ち並び、それに蔦がうじゃうじゃ絡みついて柵のようになってい
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