ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
た。タバコを吸えたことよりも、人の親切が嬉しかった。
それから30分ほどタクシーに揺られていた。助手席に座った多義子は山林と宇宙について話し込んでいた。
「──宇宙って広いから宇宙人がいてもおかしくないですよね」
「そんなもんかなぁ。いないとは言えないしなぁ。いないと思ってもいるかもわからんし」
「ですよね、たとえば炎のかたまりのような存在でも私たちにはわからない一種の意識を持っているかも知れないでしょ」
★ ★ ★
ダメだ、ダメだ、と言って、憂鬱な音楽なんか聴きながら、途方にくれてるなんてことは誰にでも出来る。タバコを何本も立て続けに吸って、ボーっとするだけが能の、
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