ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
ょ。二缶」
「出かけるの?」
「うん。もっと素敵な気分になりたいから。こんなとこいたら、くさくさしちゃうわ」
僕たちは外に出た。睡眠不足で頭が重くめまいがしていた。秋風が刺すように冷たかった。雨が降りそうな天候で、雲がどんよりしていた。何だか、街の風景がひどく淋しく見えた。僕たちは缶コーヒーを飲みながら、街をぶらぶらした。酒場が並んでいて、夜になると飲み屋から明かりが漏れる、そんな通りで、ピンクの薄紙に包まれたタバコを買ったりした。夢のような気がしていた。そして、タクシー営業所の前まで歩きついた。
「どこいく?」
「どっか遠くまでいこうか?」
「そだね」
営業所で、おっさんがテレ
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