ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
ら、多義子が沈黙を破ってポツリと、「タバコ一本ちょうだい」と言うまでしばらく黙りあっていた。
僕は「うん」と答えて、そそくさとタバコを差し出した。
「ピース吸うんだ。へーえ」……多義子がタバコをひねっている。そして火をつけた。「あーあ、またおもちゃ街に行きたいな」そんな彼女を珍しそうに見ていると、
「どうしたの?」と、多義子が首をかしげた。
「何でひねるの?」
「灰が落ちにくくなるの」多義子は視線をそらせて、ゆっくりと煙を吐き出した。
「延命公園にあるの? おもちゃ街への入り口?」
「ちがうとこにある。……あの公園よく行くの?」
「うん。夜中にしか行かないけど」
「夜中しかね…
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