ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
ような気持ちだった。僕は数年来ずっとむなしかったし、ずっと死にたかった。そんな陰鬱な日々の中で久しぶりに魂が高揚するようなことが起こったのに、
(何で僕は平静でいられるんだろう。女性と知り合えたっていうのに。……たぶんどうせうまくいかないって、思ってるからだろうな。わかってるんだよ。僕がうまくやりとおせるわけないし、それに、彼女があんまりかわいくないってのも、高揚しない理由の一つだろうな……)
でも、僕は何とかして彼女の気を引きたかった。天使のように舞い込んできた多義子。だけど、彼女がどんな話題を好むか見当がつかなかった。なかなか話を切り出せない自分の内気さ、小心さが呪わしかった。それから、
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