ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
女にそのような態度をとらせたんだろう。だから彼女が「ふっ」と薄ら笑いを漏らしたことにもさして傷つかなかった。そういう扱いをされることは頻繁にあったし、あまりに性格が合わない女性でなければ、かえって上から見られている関係のほうが僕は好きだった。
「あの水槽の中、何が入ってるの?」
「う、うん。カニが入ってるよ」
「カニだけなの?」、
「あと、ネオンテトラが一匹」
「一人じゃさびしいでしょう。あと一匹入れてやりなよ」
「そうだね。そうするよ」
もう人生嫌になった。生きていたくない、そう感じた。何かむなしかった。どうしたらいいかわからなかった。不安ではなかったが、一人だけとり残されたよう
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