ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
 
た。涙が溢れそうになったんだ。でも、何か話していないと落ち着かなくもあった。一時に感情の波が押し寄せてきて、混乱しはじめていたのかも知れない。
「水もってこようか?」
 水を飲まなくても彼女のその一言だけでパニックも軽くなった。だけど間が持たなくなった。見かねたのか、それとも彼女も同じような気持ちだったのか、話の接ぎ穂をするように、彼女が話しの続きを催促した。
「それで、どうなったの?」
「それで、……どんどん組み付けないとパレットが流れていってしまうし、右に左にずっと動き回って、反復横飛びしてるみたいに。たまに女の人が前の通路を歩くのを見るのだけが慰めだったな」
「きれいな人?」

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