ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
(どうしようか? きれいだったと言おうか? 正直に)ぐるぐるループしながらそんなことを考えた。思考がまとまらなかった。何て答えるか、決断しかねた。彼女はイライラしてきたのか、机の縁をギザギザ擦りだしていた。そうしながら呆れ顔で、
「どうしたん? 大丈夫?」と、言うのだった。
「いや、ううん、別に。そうだね、きれいだったよ。きれいだったっていうか、そういう過酷な労働してたし、自動車工場は男ばっかしだったから、あんま女性は見なかったんだよ。数人しかいなかったな。だからきれいに見えてただけかも知れないなぁ。でも、ほんと、辛かったよ。いっぺんこんな夢を見たことがあるんだ。いや、夢じゃないや。現実だ。
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