ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
んなが凍りついてしまったって、いい。凍りついたみんなの視線がいっせいに僕に集まろうが、いいんだ。そんなことはどうだっていいんだ。僕はナーバス・ライフな人生からはもうおさらばしたいんだ」
「でも戻れないわね。で、どんな仕事してたのよ」
「仕事?」
「だってあんた、『僕も働いてるときつらかったな』って口火を切ったじゃん!」
「ああ、そうだったっけ。……仕事はね、ナットを溶接冶具の底にセットして、その上にL字型のプレートブリッジという鉄でできたもんを乗せて、クイズ番組で使うような大きなスイッチを押してたんだ、そしたらスポットがズドーンと降りてきて電流が流れて、ナットがプレートブリッジにくっ付く、
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