ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
傷だらけにしてさ…… 木造アパートは中学校を囲む塀のすぐわきに建ってて、二階の窓から僕はよく同級生たちを盗み見ていた。カーテンで僕の姿を隠しながら、目だけだしてね。もし願いがかなうなら僕はあの頃に戻ってみたい。別に、人生をやり直したいってわけじゃない。その頃に戻って、もっと勉強を頑張って、もっとたくさんご飯を食べて、運動して、背を伸ばして、とか……、そんなんじゃない。ぜんぜん違う。僕は自分から人に話しかけたりしない生徒だった。コンプレックスに邪魔されてね。そんな自分を一日でいいから変えたいんだ。僕の行動によって他の生徒たちがどんな騒動を起こそうと、いい。どんなに奇異の目で見られようと、いい。みんな
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