ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
味がなくなってしまってたんだ。もう修復不可能なものは諦めてほうっておくしかないじゃん。僕は惰性のまま生きていた。何もいいことなんて起こらないことはわかっていた。無気力で、倦怠感に見舞われながら、瞬間、瞬間を何とか耐え忍んで、やり過ごして、日々を送ってた。でも、僕はまったく人生に打ちのめされてしまったわけじゃないよ。すべてを変えることはできない、でも少しだけでも今の生活を変えたかった。日常を。だってそうだろ? この僕があいつらに比べてどれほど劣ってるというんだい? リンゴ何個ぶん劣っているっていうんだい?!」
「まあね。…4,5個ぶんぐらいじゃない」
「ね、そんくらいでしょ。どうせ。あのね、十三
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