ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
が浮かんでいて、石に絡みつきながら、ゆっくりと流れていってた。油を見ていると泣き出したくなって、しわだらけの紙幣を何とか入れてしまおうとしてたんだけど、何度やっても戻ってきてしまうんだ。タバコの火を押し付けられた丸い穴がいくつかあいているプラスチックケースにね、白い腹を、ねっとりと押しつけて、蛾が張りついたまま動かない。僕が仕事で苦しんでるときも、この自動販売機で蛾はずっと身動きが取れないままでいたんだろう。けど1?や2?ぐらいだったら動いたことに気づかないよね」
「まあね」
「僕は昔からくずれてしまったものに興味はなかった。だから、自分が望んでいた夢がくずれてしまったから、自分の人生に興味が
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