ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
 
みりした口調で語りだした。僕は、彼女らしくないな、と、ちらっと思った。
「私ね、昔のことなんだけど、警備員のバイトしてたことがあるのよ。……本当に馬鹿にされたわ。制服のままコンビニに入ったら大学生バイトみたいな小娘に馬鹿を見るような目で見られたり……、そんなのの連続だった。でもそれで不思議なとこを知ったわ」
「不思議なとこ?」
「ええ。私、カタコウしてたんだけど、カタコウって知ってる? 片側交互通行のことなんだけど、旗、振って、一方の車を止めて、もう一方で待ってる車を通すの。二人一組でね。それをしてたんだけど、おしっこしたくなって組んでた人に無理言って、行かせてもらったの。森の中に入っていっ
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