ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
 
気持ちを抑えようとして、腕立てふせ、5回ぐらいするが、すぐきつくなってやめて、なにもすることがなく、ひまで、投げ出してた抜粋集をとりあげて、なんかもういやらしい中でもなんかそそる部分だけ拾い読みしだしてて、なんとも言えない気分で空想にふけりだす、すると、世紀も地域もちがう赤の他人の想念と混じりあい、人格までもが変わってしまう、俺が農夫で、牧師がおまえで、そんなふうに意識が交換されちゃって、ただただリンネのハザマを鍬をかかげてたゆたうのみ。繰る日も、繰る日も、果てしなく、せわしなく……」
 多義子は手櫛で髪を梳かしながら、
「……え? 終わり? ……展望台でてきてないじゃん」
「……いや、……
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